泌尿器癌に対する逐次薬物療法に関する研究
当科では泌尿器科悪性腫瘍に対する新規薬物療法に積極的に取り組んでいますが、特に転移性腎細胞癌および去勢抵抗性前立腺癌に関する逐次治療については、当科からの報告が本邦における至適治療戦略の確立に極めて重要な役割を果たしています。転移性腎細胞癌に対しては、原則として、一次治療としてsunitinib、二次治療としてaxitinibを投与する逐次治療を施行しており、その結果を多角的に解析し、早期腫瘍縮小効果の予後に及ぼす影響、sunitinibの代替投与スケジュールの意義、チロシンキナーゼ阻害剤逐次投与例における抗腫瘍効果の相関欠如等についての興味深い報告をしています。今後の課題としては、nibolumab等の所謂I-O drugが実臨床の場にも導入されたことにより、チロシンキナーゼ阻害剤を中心とした分子標的薬による逐次治療におけるI-O drugの役割を明らかにしたいと考えています。一方、去勢抵抗性前立腺癌においてはその診断後、原則としてアンドロゲン受容体標的薬(abirateroneあるいはenzalutamide)、docetaxel、cabazitaxelを順次導入する逐次薬物療法を選択してきました。また、これらの結果を解析し、多数の報告を行ってきましたが、特にアンドロゲン受容体標的薬の交叉耐性に関する報告は国際的にも大きな注目を集めています。今後の課題としては、アンドロゲン受容体標的薬とタキサン系抗癌剤との交叉耐性の解析が挙げられ、アンドロゲン受容体標的薬を先行して導入する場合、先行薬剤(abiraterone vs enzalutamide)の種類あるいは奏効性が、タキサン系抗癌剤の抗腫瘍効果に及ぼす影響の解析等を行う予定です。