泌尿器癌に対するバイオマーカー開発に関する研究
癌の早期発見を可能とする診断マーカー開発の重要性は、誰もが認識しているところです。我々も、尿中播種細胞におけるCD44のalternative splicing機構に注目した尿路上皮癌診断や血清uPAおよびuPA受容体の発現測定による前立腺癌診断のシステムを開発し報告してきました。現在は本学の細胞分子解剖学講座と共同で、150種類の脂質メディエーターを一斉定量できる液体クロマトグラフ質量分析計を用いて、腎細胞癌患者の尿検体を用いたメタボローム解析を行い腎細胞がんの早期診断を可能とするバイオマーカーの同定を目指した研究を行なっています。一方で、治療に対する反応性や予後を予測し得るバイオマーカーの開発も非常に重要です。我々は、シグナル伝達、アポトーシス、細胞周期、血管新生、オートファジー等に関連する分子の発現と各種泌尿器癌における薬物療法の効果や予後との相関を解析し、多くのバイオマーカー候補分子を同定し報告してきました。また、近年泌尿器癌に対しても、分子標的薬、I-O drug等の様々な新規治療薬が使用可能となってきましたが、これらの薬剤をどのような特徴を有する癌に、どのような順序で投与するのかという問題に関しては、明確なエビデンスはありません。したがって、これら新規薬剤の効果や導入後の予後を予測し得るバイオマーカーの開発は喫緊の課題となってきています。特に腎細胞癌に対して2016年に承認されたnibolumabは、逐次治療体系における位置付けがいまだ確立されておらず、薬価等も考慮すると、その効果を予測し得るバイオマーカーの開発は急務と言えます。そこで腎細胞癌に対するnibolumabの非常にユニークなバイオマーカー探索研究を、当教室が中心となって多施設共同で実施する準備を進めています。